20世紀の哲学者サルトル(フランス)は、外界の現実は私たちの働きかけによって、「そのような現実」になっている。外界の現実というのは私の一部であり、切って離すことはできないが故に、自分の行動の責任はすべて自分自身に跳ね返ってくる、と告げた。
責任云々という論点は別にして、外側の社会は、実際に人間が創り上げたものなので、私たちの暮らす街の営みには、「私自身の考えや行為」が大きな影響を与えているのは事実です。
また、内的に考えてみると、「自分」と「外界」の関係は、「自分の心の世界」と「自分を含む人間の心が作り上げた世界」(人類の心)の関係と言い直すこともできます。つまり、自分の心が人類の心に働きかけをする一方、人類の心も自分の心に働きかけを行っています。この原理そのものが、これから述べる「人類の心」のメカニズムになります。
美しい芸術は生命を繁栄に導く性格にあり、個人的な芸術家は、意識的・無意識的に地球生命の存続につながる「普遍的な価値」を創作して、人々に「大切なものは何か?」を提示するので、人々がそれらを鑑賞し、大きく共鳴することで、それぞれの意識は各民族の歴史を超えて、世界的な共鳴となり、やがて「人類の心」を生み、育てることが可能になります。
全人類がひとつつになって力を合わせ、世界政府というイメージ像(人類の自己意識)を誕生させて、6タイプの国家により世界の均衡を保つようにする。この世界政府の役割は、「すべてのタイプの国家から一定の距離をとりつつ、世界を平和的に統制すること」です。
そのためには、それぞれの国家に暮らす人々、それぞれの組織に属する人々は、これまでの社会常識を疑う中で、醜い人間の行為に対しては、芸術を有して決然と対峙し、自分の表現が招く結果を見通しながら、自身の創作(ミーアーツ)に取り組む必要があります。
この人類の自己意識の構築には、まず、二つの要件が必要になります。
◆ 第一に、人類の自己意識は、確固とした大義を有して、異なる価値観を有する国々の訴えをまとめ上げる必要があります。この大義は、「美」の価値がよいでしょう。生命の繁栄を支える美の価値は生命的なものとして人々の感性に宿り、人々の自己意識の判断に絶対的な根拠を与える中で、地球全体を調和に導けるからです。
◆ 第二に、人類の自己意識には確固とした正統性が求められます。美による大きな意思決定を行う際、美に続く善、善に続く真にも注意を向けつつ、「そもそも何が美・善・真なのか?」ということを明確に表明して、人類の自己意識の権威を示す必要があります。
この正統性を担保するため、私たちは美しい芸術を発展させて、人々の美意識を洗練させていく必要があります。美しい芸術作品が互いに競い合う中で、時代や民族を超越して、永遠に人間的なもの、普遍妥当性を持つものへと芸術を飛翔させる。
宇宙や地球に宿る「美」を、芸術家らが時代感覚をもって美しく繊細に表現し、それぞれにメッセージを送れば、最初は小さな共鳴でも、ネット交流を通じて拡散し、やがて人々の美への静かで大いなる共感となるでしょう。その上で、大多数の善良な人々が思い描く、その時代にふさわしい生命繁栄のスタイルを描き出すことで、より大きな意思決定を導くことができます。
インターネットによって世界中のコンピュータが接続され、個人のネットワークが拡散できる時代において、芸術(美)の頂点を目指す仕組み作りは、決して夢物語ではありません。
フランス革命では、王から民主国家に主権が移りましたが、今、その主権は国家から個人に分散されつつあります。今、私たちは、美の価値を柱に「表現の自由」という探照灯を携えて、ユーザー同士の多対多の関係を築き、さらに、拡大することができます。
個人ユーザーの「美的感覚」は、美しいものに対する個人の判断になりますが、純粋な美には地球保存を促す作用、万人に共通する原理があります。一人のユーザーの表現が美の価値を深く掘り下げ、人々の共感を得られることで、世界的な一体感を生み出す種となるでしょう。
美しい芸術は、国家のあり方をチェックする手段のみならず、さまざまな国に暮らす人々の勇気と創造力によって美しい芸術を生み出して団結し、情報の共有によって「人類の意識体」を作り上げれば、一国家を超え、グローバルな新機軸と世界秩序を育むための手段にもなり得ます。
世界政府(人類の心)による新たな秩序作りは、誰か一人の思いや、何か一つの考え方やビジョンでできるものではありません。
芸術の表現を介して、人々(個々の自己意識)の尊厳が尊重されつつも、多様性溢れる人々が、ひとつになって思考してみる。社会の変化や国際情勢に応じて、「どのような世界を作っていくべきか?」を話し合い、問題解決のための最適なアプローチを探し出すことで、世界政府のイメージが人々に共有され、その共有がより深い協力関係を生み出すことで、世界は動き始めるのです。
世界政府(人類の心)のイメージが誕生した場合、6タイプの国家(各マインド機能)の性質も考慮し、適切な役割分担も考えてみることで、世界の多様性を担保しましょう。たとえば、今の時代、次のような役割分担が考えられます。
直感機能(神権主義);美しい芸術の軸、自然保護、世界の芸術の柱
精神機能(民主主義);善い哲学の軸、世界統一の制度・ルール作り、世界の立法の柱
思考機能(エリート主義);真の科学の軸、AI、クリーンエネルギー、宇宙開発
肉体機能(軍国主義);国境管理、警察力、スポーツの発展、世界の司法の柱
愛情機能(君主主義);平等な教育と健康、食品衛生、世界の行政の柱
集団機能(共産主義);医療技術の革新、自由な労働スタイルの創造、雇用安定
人類の自己意識(世界政府)は、6つのマインド機能の能力を世界政府のメカニズムの中に組み込む一方、時代の流れに合わせながら、人々の美意識を軸とした総括的な判断を下せるようになるでしょう。
人間社会のルールは、私たち人間によって作られ、試され、時間の経過の中で完成され、さらに、未来の世代によって再評価され、変えられ得るもの。そのルールある法の世界において、現代に暮らす私たちは、それぞれの国家に巣くう醜い勢力による不正に得た財産を保持するための戦争、科学技術に伴う環境破壊など多くの難題を抱えています。
これら解決の第一歩になるのが、人々による美しい芸術の推進です。醜勢は制度を不当に利用する方法や抜け道を見つけ出す一方、人々の怒りと不公平感を増大させて国家の分断を図ります。
だからこそ、芸術家が現代社会の問題の本質を浮き彫りにする中で、声を挙げて、多様性を認める社会規範の構築に貢献する必要があります。さまざまな鑑賞者の自己意識が、美の本質を悟る中で得た感覚は、大いなる叡智を生み出し、結束して世界政府(人類の自己意識)の発展に寄与することになるでしょう。